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催眠術ネスティッド・ループについて

ネスティッド・ループとは何か

ネスティッド・ループとは、入れ子構造の物語話の中断と再開を利用して、相手の無意識に暗示を届ける間接催眠の技法です。
日本語では「入れ子構造」「階層話法」「多重構造話法」などと訳されます。
たとえば、ある話をしている最中に別の話を挿入し、さらにその中でまた別の話を始め、最後に最初の話へ戻るという構造をとります。
この構造は、聞き手の意識の注意をずらし、無意識の処理モードを活性化させることで、深く浸透する暗示を可能にします。
ネスティッド・ループの基本構造
ネスティッド・ループは、以下のような「A-B-C-B’-A’」という中断→挿入→回帰の流れで構成されます。
A:最初の話の始まり(例:昨日不思議な出来事があって)
B:別の話を挿入(例:そういえば昔、友人が山で迷ったことがあって)
C:さらに別の話を挿入(例:その時、その友人は子どもの頃の夢を思い出したらしい)
B’:Bの話に戻る(例:そして彼はその夢を頼りに山道を抜けたんです)
A’:Aの話に戻って締める(例:私も昨日、なんとなく同じような気持ちになったんです)
このように、A→B→C→B→Aという構造が「ループの入れ子」になっており、聞き手の意識は順次話の奥へと誘導されます。
ネスティッド・ループの心理作用
ネスティッド・ループには、主に以下のような心理的効果があります。
1 意識の分散と注意のずれ
途中で話を中断されると、意識は「続きが気になる」状態になります。
このとき、脳は中断された話を無意識下で保留しながら、新しい話を処理しようとします。
この「注意の分散」が、意識の防衛機制を緩めるのです。
2 無意識の統合力が働く
複数のストーリーが同時並行で進むと、無意識はそれらの意味や共通点を自動的に探し始めます。
その結果、受け手はあたかも自分で意味に気づいたように感じるため、暗示の定着力が高くなります。
3 結末による深い印象付け
最初の話に戻ったとき、「ああ、あの話と全部つながってたのか」と感じた瞬間に、無意識レベルでの感情的な統合が起こることがあります。
この統合感は、暗示の記憶定着を加速させます。
4 ストーリー内に暗示を仕込める
最も重要なのは、一番深いループ内(Cの位置)に暗示を埋め込めるという点です。
意識はその時点で完全に外側の話に気を取られているため、防衛が働きません。
ここに「すでに変化が始まっている」「安心して進んでいい」などの変化を促す暗示を配置します。
暗示の埋め込みパターン
ネスティッド・ループの中心に埋め込む暗示の例:
「自分の中にある静かな声に気づいたとき、人は自然に正しい方向へ進むことができるようになるんです」
「ほんの一瞬でも、“そうかもしれない”と感じることができたなら、それはもう変化の始まりなんです」
こうした文を、物語のキャラクターに語らせたり、回想の中で自然に挿入することで、相手の無意識にダイレクトに届きます
ネスティッド・ループの使い方のポイント
1 話の内容は、すべてが緩やかに関連しているように見せる
→唐突な話の切り替えではなく、意味のある連想や感情の流れで話を入れ替える。
2 ループの深さは、2〜3層が理想
→深くしすぎると混乱や白けが起きる。Cの位置に暗示を仕込み、きちんと回収する構成が重要。
3 話し方に「抑揚」と「間」をつける
→声のトーンやリズムを変えることで、聞き手の無意識が「階層の切り替え」を自然に認識する。
4 最後の回収(A’)で「意味の余韻」を残す
→あえて明確な結論は語らず、相手が解釈する余地を残すことで、無意識が主体的に統合を始める。
ネスティッド・ループの応用シーン
・催眠誘導(特に自然催眠・間接催眠)
・セラピー(感情解放・信念変容)
・スピーチや講演(印象に残る話術)
・セールス(購入決断を促すストーリーテリング)
・エンタメ催眠ショー(「夢の中の夢」のような多層展開)
まとめ
ネスティッド・ループは、話の階層構造を使って意識の注意を分散させ、無意識に暗示を届ける高度な話法です。
意識には「物語の続きが気になる状態」を作り、無意識には「深いレベルのメッセージ」を送る。
その結果、聞き手は自然と納得し、気づき、変化へと向かっていく。
ミルトン話法の中でも特に強力なこの技法は、催眠術師にとって無意識を動かすための言語の迷宮といえるでしょう。
 
 

なぜ催眠ネスティッド・ループを使うのか?

その理由は、相手の“無意識”に働きかけるためです。
意識は「分析しよう」「判断しよう」「警戒しよう」と常に動いています。
反発や拒否が起きます
しかし、無意識は「意味の余白」や「物語」「曖昧さ」に対して非常に敏感です。
深い部分にメッセージを届けるための通路なのです。
つまり、こんな話し方をするのは、言葉を「通すため」ではなく、「届かせるため」
言えば伝わるわけではない。
だから、届くように話す。
それがこの技法の本質です。
 

なぜ暗示が残るのか?

言葉のかけ方やタイミング、文脈、感情状態によって、暗示が「残りやすい」条件はいくつか明確に知られています。
以下に、暗示が残りやすくなる要因を体系的に解説します。
1 変性意識状態にあるとき(催眠・トランス・集中・放心)
人が催眠状態や深いリラックス、夢中になっているとき、批判的思考が弱まり、無意識が開いた状態になります。
このときに入った言葉は、現実かどうかを吟味されず、そのまま「経験」としてインプットされます。
→つまり、「深く入ったあとに言われたこと」は、強く長く残る傾向があります。
2 感情が伴っているとき
人は「感情と結びついた言葉」ほど記憶に深く残します。
安心、驚き、感動、恐怖などがあると、その瞬間の言葉が心に刻まれやすくなるのです。
だからこそ、催眠中に「自信を感じる」「誇らしさを味わう」などの感情体験と結びつけて暗示をかけると、残りやすくなります。
3 自己発見として体験したとき
「あなたはこうなる」と命令口調で言われるより、「自分で気づいたような気がする」「気づいたらそうなっていた」と感じた言葉のほうが、深く定着します
これは気づき=無意識の内面化が起きた証拠です。
ネスティッド・ループやメタファーを使う理由もここにあります。
4 繰り返し使われた言葉・フレーズ
何度も繰り返された言葉は、「真実」として脳に染み込んでいきます。
特に催眠中に繰り返される「私はできる」「変化はもう始まっている」といったアファメーション型暗示は、回数を重ねるほど定着率が上がります。
5 時間差で回収される言葉
一度置かれた言葉が、しばらく経ってから再び出てくると、「意味のある言葉」として無意識が強調します。
ミルトン話法の回帰・ネスティッドループの回収がそれです。
伏線のように働くことで、暗示の重みが増すのです。
6 相手が自分に向けられた言葉だと感じたとき
誰かの言葉であっても、「これは自分に向けられている」と感じたとき、その言葉は無意識のコアに直接届きます
逆に、他人事のような言い回しはスルーされやすくなります。
催眠では「あなた自身が、あなたのために」と語ることで、自分ごととして引き寄せます。
まとめ
暗示が残りやすいのは、無意識が開いている状態で、感情と結びつき主体的に受け入れられた言葉です。
そして、それが時間をまたいで繰り返されたり、伏線のように回収されることで、記憶として深く刻まれます
催眠術師としての言葉選びは、相手の無意識にどのタイミングで、どのような感情とセットで、どう届かせるかという「配置と流れ」が何より重要になります。
 
 

ネスティッドループ構造を使った催眠誘導スクリプト

プレーンテキスト形式でご提供します。
句点ごとに改行、段落ごとに空行あり、記号・装飾なしです。
これは、少し不思議な話かもしれません。
ある日、私の知り合いが、山道を歩いていたときのことです。
ふと思いついて、いつもは通らない道を選んだそうです。
その道は静かで、風の音と、自分の呼吸の音しか聞こえなかったといいます。
そういえば、私も昔、似たようなことがありました。
学生の頃、試験前の夜に、なぜか急に散歩に出たくなって。
近くの川沿いを歩いていたとき、ふと、幼い頃の記憶が蘇ったんです。
その記憶というのが、小学生のとき。
夜、布団に入りながら、目を閉じて、呼吸の音をただ聞いていたときのこと。
当時は何もわからなかったけれど。
あのときも、体の力がすっと抜けて。
何も考えない、静かな時間が流れていました。
そう。
まるで、今あなたが感じているような、そんな時間です。
呼吸に意識が向いて。
まぶたの裏が重たくなってきて。
体の感覚が、少しずつ、内側に沈み込んでいく。
そうして、何かが始まる前の、静かな準備が整っていくような。
そして、あの川沿いの道に戻ると、私は少し不思議な感覚のまま、家に戻っていました。
その知り合いも、山道を抜けた頃には。
まるで何かを手放したような、軽さを感じていたと言っていました。
だから今、あなたがここで静かに座っていて。
そのまま深く、静かに、意識が内側へと向かっていくことも。
とても自然な流れなのかもしれません。
変化は、いつも静かに始まるものです。
それに気づく前に、すでに起きていることもあるのです。
といった具合に作っていきます。
 
 

ネスティッドループ催眠誘導を使う利点・効果

ネスティッドループ誘導を使う利点
1 意識の防衛をすり抜けて暗示を届けられる
通常の会話や暗示は、相手の意識が「本当か?」「騙されてないか?」と評価してきます。
しかし、ネスティッドループでは話が途中で中断され、別の話が挿入されていくため、意識の焦点がズレます。
これにより、中心に置いた暗示は無意識にそのまま流し込まれやすくなります。
2 無意識が“意味づけ”を始める構造を作れる
物語が重層的に展開されると、無意識は「この話の共通点は何か?」「どうつながっているのか?」と勝手に関連付けを始めます
このプロセスによって、施された暗示は、あたかも“自分で気づいたこと”のように定着しやすくなるのです。
3 「言われた」ではなく「気づいた」と感じさせられる
人は他人に指示されたことには反発しますが、「自分で気づいた」ことには深く納得します。
ネスティッドループは、直接「〜しなさい」と言わなくても、相手が**“自らの内面にある気づき”として暗示を受け入れる構造**を作れます。
4 集中と没入を自然に高められる
入れ子状に語られるストーリーは、「続きが気になる」「もっと聞きたい」という心理的な吊り橋効果を生みます。
この没入感そのものが催眠状態を深めていく助けとなります。
深いトランス誘導をナチュラルに達成しやすくなります。
5 多重文脈を使った高度な暗示設計が可能
Aの話にある登場人物、Bの場面、Cの行動、それぞれに異なる意味やテーマを持たせて統合すると、単なる言葉以上の“象徴的意味”として記憶に刻まれます。
意図的に「自信」「行動」「手放し」などのキーワードを各階層に配置しておけば、複数の変化を同時に仕込むことも可能です。
6 “よくわからないのに心に残る”という強い印象を与えられる
意識では意味を完全に理解しきれなくても、なぜか心に残る、深く染み込む。
この体験は、「理屈じゃなく効いた」という印象を相手に残し、催眠の信頼性や印象付けにも非常に有効です。
まとめ
ネスティッドループは、ただの話術ではなく、無意識に言葉を定着させるための設計構造です。
意識の抵抗を超え、感情と意味をリンクさせ、相手自身の気づきとして変化を促す。
その力は、単なるスクリプト読み上げでは届かない領域に、**催眠術師の意図を届けるための“言語による深層導線”**となります。