暗示過敏性が高すぎることによる反応障害とは?
催眠術の効果を測る指標の一つに、「暗示感受性」や「被暗示性」と呼ばれる特性があります。
これは、暗示に対してどれだけ反応しやすいかを示すものです。
一般的には、被暗示性が高い方が催眠に入りやすく、現象も起こりやすいとされています。
しかし、この特性が極端に高い場合、必ずしも良い結果につながるとは限りません。
実際に、「暗示に過敏すぎる」ことで、混乱やトラブルが生じるケースが報告されています。
例えば、催眠誘導中に与えられた暗示に対し、意図以上に深く反応してしまう。
あるいは、誘導終了後も暗示の影響が長く残り、現実感が戻りにくくなる。
また、自分が反応している内容が「演技なのか本当なのか」がわからなくなり、自己混乱に陥るケースもあります。
このような状態は、「多重自己認識性の障害」や「自己一貫性の崩壊」とも呼ばれ、一部の心理療法の現場で問題視されています。
本人は真面目に反応しているつもりでも、意識の深層で複数の反応パターンが競合し、結果として感情や行動が不安定になることがあります。
これは、暗示が強すぎたというよりも、「受け取る側の反応感度」が極端に高かったことによって生じる現象です。
通常の催眠技法では、こうした被暗示性の極端な偏りは想定されていないため、予防的な設計が求められる分野です。
たとえば、事前の反応確認、解除の徹底、選択的な暗示の使用、観察重視のフィードバックなどが有効とされています。
また、こうしたタイプは、催眠中の主観的な没入が深すぎるため、後から思考的に整理する時間が必要になることもあります。
暗示過敏性が高すぎることは、必ずしも“才能”や“素質”ではなく、注意すべき特性のひとつでもあるのです。
催眠術師としては、「かかりやすい人ほど慎重に扱うべき」という姿勢が、今後より重要になっていくでしょう。