催眠術が上達する人に共通する「観察の習慣」
同じ手順を習い、同じ言葉を使っているのに、催眠術が上達する人と、なかなか手応えをつかめない人がいます。その違いは、どこにあるのでしょうか。
話し方でしょうか。声の低さでしょうか。それとも、自信があるように見えることでしょうか。
どれも気になるところですが、学ぶときに大切にしてほしいのが「相手を観察する習慣」です。自分が何を言うかだけでなく、その言葉を受け取った相手に何が起きているか。そこに目を向けることで、練習から得られるものが変わります。
こんにちは。催眠術師ウダッチです。今回は、催眠術の上達につながる観察について、練習の場面を交えながらお話しします。
まず、観察とは、相手をじっと見つめて状態を見抜くことではありません。表情や動き、返事などを手がかりにしながら、本人の感じ方を確かめることです。
「この表情だから催眠に入っている」「目を閉じたから、もう暗示が通る」。そんなふうに一つの反応だけで結論を出さず、今の相手に合った進め方を考えるために観察します。
初心者のうちは、覚えたセリフを思い出すことに一生懸命になりがちです。「次は何を言うんだっけ」「順番を間違えていないかな」と考えていると、目の前の相手を見る余裕がなくなります。
相手が首をかしげていても、そのまま次へ進んでしまう。すでに手が動き始めていても、気づかず説明を続けてしまう。これでは、相手の反応と自分の言葉がかみ合いません。
最初からすべてを見ようとする必要はありません。まずは、一つ説明したら相手の様子を確かめる。その小さな習慣から始めましょう。
例えば、指が近づくイメージをしてもらう場面を考えてみます。
相手がすぐに指を動かし始めることもあれば、しばらく変化が見えないこともあります。大切なのは、動いたかどうかだけで判断しないことです。
指は動いていなくても、本人は引き寄せられる感じを持っているかもしれません。反対に、動いていても、自分で意識して動かしている場合もあります。外から見える動きと、本人の体験は、必ずしも同じではありません。
そこで、「今、どんな感じがしていますか?」と聞いてみます。見えたことと、本人の言葉を合わせて考える。それが観察の基本です。
また、変化を見るには、始める前の様子を知っておくことも役立ちます。
もともと口数が少ない人が、静かにしている。それだけで「集中している」とは言い切れません。普段からよく笑う人の笑顔と、戸惑いを隠すための笑顔も、外からは区別しにくいものです。
会話をしているときの声の大きさ、返事の速さ、表情、姿勢。その人の自然な様子を知っていると、途中で何が変わったのかに気づきやすくなります。
ただし、変化があったからといって、すべてを催眠による反応と考えないことも大切です。姿勢が変わったのは、単に座りにくかったからかもしれません。目を閉じたのは、疲れていたからかもしれません。
観察が上手になるというのは、決めつけが増えることではなく、確かめ方が丁寧になることなのです。
練習中は、分かりやすい成功だけに目が向きやすくなります。
「手が開かなくなった」「椅子から立てなくなった」といった結果は、確かに印象的です。しかし、そこに至るまでにも、学べることはたくさんあります。
説明を言い換えたら、相手がうなずいた。少し待ったら、本人から感覚を話してくれた。難しい言葉をやめたら、質問が出るようになった。こうした変化も、進め方を考える手がかりです。
現象が起きたかどうかという結果だけでなく、どの言葉のあとに、どんな反応があったのかを見る。その視点を持つと、一回の練習が「できた」「できなかった」の二択で終わらなくなります。
そのために必要なのが、待つことです。
説明をした直後に反応が見えないと、不安になって言葉を重ねたくなるかもしれません。しかし、相手は今、説明を理解しようとしているのかもしれませんし、イメージを思い浮かべている途中かもしれません。
そこへ次々に指示を加えると、何に意識を向ければよいのか分からなくなることがあります。一つ伝えたら、相手が受け取る時間をつくる。反応を見るための間を取ることも、練習したい技術です。
もちろん、黙って長く待てばよいという意味ではありません。困っている様子なら説明を補い、質問があれば答える。待つことと、放っておくことは違います。
本人への聞き方にも工夫が必要です。
「重くなりましたよね?」「もう開かないですよね?」という聞き方ばかりでは、相手が期待に合わせて答えてしまう可能性があります。練習相手が知り合いなら、気を使ってくれることもあるでしょう。
まずは「どんな感じですか?」「やりにくかったところはありましたか?」など、本人が自由に答えられる聞き方をしてみてください。
「特に変わりませんでした」という答えも、役立つ情報です。期待した反応と違っていても、そのまま受け止める。率直に話してもらえる関係があってこそ、練習を見直せます。
観察するときは、不思議な反応だけでなく、戸惑いや負担にも目を向けます。
返事が曖昧になった、姿勢を何度も変えている、表情がこわばった。そうした様子があれば、続きを急がず、困っていることがないかを確認します。
笑っているから楽しんでいる、黙っているから問題ない、と判断しないことです。本人がやめたいと伝えたら止めるのはもちろん、言い出しにくそうなときにも確認できる余裕を持ちましょう。
催眠術の上達には、先へ進む判断だけでなく、説明に戻る、休む、終えるといった判断も含まれます。
観察の習慣を身につけるには、練習後の振り返りも役立ちます。
覚えているうちに、「何を伝えたか」「何が見えたか」「本人はどう感じたと言ったか」を短く書き留めてみましょう。ここでは、事実と自分の解釈を分けることがポイントです。
例えば、「指が少し近づいた」は見えたこと。「引かれる感じがした」は本人の感想。「この説明が合っていたのかもしれない」は自分の解釈です。
この三つを混ぜずに残しておくと、後から見直すときにも、何を根拠に考えたのかが分かります。次回は言葉を一つ変えてみる、説明を短くしてみるなど、練習の課題も具体的になります。
相手の許可を得て練習を録画できるなら、自分の様子を振り返る方法もあります。
撮影中は落ち着いていたつもりでも、見返すと早口だったり、相手が話しかけようとしているのに説明を続けていたりすることがあります。相手の観察と同時に、自分の進め方も観察するわけです。
スクールで指導を受ける際も、「うまくいきませんでした」だけでなく、「この言葉のあとに、こういう反応がありました」と伝えられると、改善点を具体的に検討しやすくなります。
そして、うまくいったときにも振り返ってください。
一度成功した方法が、すべての人に合うとは限りません。相手がもともと体験に積極的だったのか、説明が分かりやすかったのか、十分に時間を取れたのか。成功した場面にも、考える材料があります。
催眠術が上達する人に共通する習慣として、ぜひ意識してほしいのは、自分の予定よりも目の前の反応に関心を持つことです。
「次に何を言おう」だけでなく、「今、この人はどう感じているだろう」。その問いを持つことで、言葉の選び方も、待ち方も、確認の仕方も変わってきます。
総合催眠術スクール東京では、催眠術を学びたい方に、言葉や手順とともに、相手の反応を見ながら進めることの大切さをお伝えしています。
催眠術を、覚えたセリフの披露で終わらせないために。次の練習では、一つ言葉を伝えたあと、相手にどんな変化があるかを確かめてみてください。その小さな習慣が、上達の手がかりになります。