HOME | ウダッチ催眠術スクール | テストステロンと催眠のかかりやすさの関係

催眠術スクール&催眠術カフェ東京|催眠術体験できる場所
   友だち追加

テストステロンと催眠のかかりやすさの関係を、催眠術師が考察する

「男性ホルモンが多い人は催眠にかかりにくいのか」。催眠術を学ぶ人から、時々こういう質問を受けます。結論から言えば、テストステロンと催眠感受性の直接的な関係を示した研究は、ほとんど存在しません。だから「かかりにくい」とも「かかりやすい」とも、科学的に断言はできません。しかし、テストステロンが人の心理に及ぼす影響と、催眠のかかりやすさに関わる性質を並べてみると、興味深い橋がかかります。今日は「直接の証拠はないが、こう推測できる」という誠実なスタンスで、この二つの関係を掘り下げます。

まず前提|直接の研究は、ほぼ存在しない

最初に、正直に書いておきます。
テストステロンの値と、催眠感受性(催眠へのかかりやすさ)を直接測定して関連を調べた研究は、私の知る限り、確立されたものがありません。
だから、これから書くことは「証明された事実」ではなく「二つの知見を橋渡しした考察」です。
催眠術を学ぶ人には、この区別を大切にしてほしいと思っています。
「なんとなくそう聞いた」を「事実」として語らない。
これは催眠術師としての誠実さの、基本になる姿勢です。
その上で、考察を進めます。

テストステロンは、心にどう影響するのか

テストステロンは「男性ホルモン」として知られていますが、女性の体内にも存在します。量の違いはあれ、誰にでも影響します。
このホルモンが心理面に及ぼす影響として、研究で比較的よく語られるものを挙げます。

支配性・優位性の追求

テストステロンは、社会的な地位や優位性を求める傾向と関連づけられることがあります。
「相手より上に立ちたい」「主導権を握りたい」という動機です。
集団の中で、リーダーシップを取ろうとする傾向とも関わるとされます。

警戒心・防衛性

優位を保とうとする傾向は、裏を返せば「相手に主導権を渡すまい」という警戒にもつながります。
「隙を見せたくない」「コントロールを失いたくない」という心理です。

リスク選好

テストステロンは、リスクを取る行動との関連も指摘されています。
慎重さより、大胆さ。安全より、挑戦。
こうした傾向です。

感情表現の抑制

一般に、テストステロンが高い状態は、感情をあまり表に出さない傾向とも語られます。
「弱さを見せない」「感情的にならない」という方向です。
ただし、これらはすべて「傾向」であり、個人差が非常に大きいことを強調しておきます。

催眠のかかりやすさに関わる性質とは

一方、催眠感受性(催眠へのかかりやすさ)に関わるとされる性質は、研究である程度整理されています。

想像への没入のしやすさ

最も強く関連するとされるのが、これです。
イメージに深く入り込める。空想や物語に没頭できる。
こうした「没入傾向(absorption)」の高さは、催眠感受性と相関することが複数の研究で示されています。

委ねることへの抵抗の少なさ

催眠は、術者の誘導に身を委ねることで深まります。
「コントロールを手放していい」という感覚を持てる人ほど、深く入りやすい。
逆に「絶対に主導権を渡さない」という構えが強いと、入りにくくなります。

批判的思考が緩みやすいこと

催眠状態では、「本当か?」「おかしくないか?」という批判的な検証が薄まります。
この検証を、一時的に手放せる人ほど、暗示が届きやすい。
常に警戒し、常に検証している状態だと、暗示が入る隙間が生まれにくい。

二つを並べると、橋がかかる

ここで、二つのリストを並べてみます。
テストステロンが高める傾向とされるもの。
支配性。警戒心。コントロールを手放さない構え。感情表現の抑制。
催眠のかかりやすさに関わる性質。
委ねやすさ。批判的思考の緩みやすさ。想像への没入。感情の動きやすさ。
見事に、逆を向いています。
テストステロンが高める性質は、催眠感受性に関わる性質と、方向性が反対に見える。
ここから、一つの仮説が立ちます。
「支配性や警戒心が強く出ている状態は、催眠に入りにくい方向に働くのではないか」
これは、あくまで仮説です。
しかし、催眠術師としての現場感覚とは、そう矛盾しません。

現場の感覚と照らし合わせる

催眠術の現場で、深く入りにくい人には、ある傾向があります。
「絶対にかからないぞ」と身構えている人。
「主導権を渡したくない」という警戒が強い人。
「こんなことで変わるはずがない」と、常に検証している人。
こうした人は、たしかに深く入りにくい。
これらの構えは、先ほど挙げた「テストステロンが高める傾向」と重なる部分があります。
だからといって「テストステロンが高い人はかかりにくい」と結論づけるのは、飛躍です。
構えは、ホルモンだけで決まるものではありません。
性格、経験、その日の状態、術者との関係。無数の要因が絡みます。
ただ、「支配性や警戒心が前面に出ている状態」が催眠を妨げやすいことは、経験的に言えます。
そしてテストステロンが、その状態を後押しする一因になっている可能性は、否定できません。

ここで重要な視点|「状態」は変わる

ここが、催眠術を学ぶ人に最も理解してほしい点です。
テストステロンの値は、固定ではありません。
状況によって、大きく変動します。
競争的な場面では上がる。リラックスした安全な環境では、相対的に落ち着く。
つまり、「支配性や警戒心が高まっている状態」は、環境によって作られている部分がある。
ということは、環境を整えれば、その状態は緩められる。
催眠術師の仕事の本質が、ここにあります。
かかりにくい人を「かからない人」と決めつけるのではない。
その人が委ねやすい状態を、環境と関わりで作り出す。
警戒を解いていい安全な場を用意する。主導権を奪わないと伝える。批判を手放していい空気を作る。
こうした働きかけで、「かかりにくい構え」は緩みます。

かかりにくい人へのアプローチ

この考察から、実践的なヒントが引き出せます。
支配性や警戒心が強く出ているタイプの人には、次のような関わりが有効です。

主導権を奪わないと明示する

「あなたの意志は尊重されます」「嫌なことはしなくていい」「いつでもやめられます」。
この保証が、「主導権を渡すまい」という警戒を緩めます。
警戒が緩むと、委ねやすくなります。

「かからないこと」を許可する

「かからなくてもいい」と最初に伝えることが、逆に効きます。
「かけよう」とする圧が、警戒を強めるからです。
圧を手放すと、相手の身構えも解けやすくなります。

対等性を作る

支配性が強い人は、「上に立たれる」ことに敏感です。
術者が上から誘導するのではなく、対等なパートナーとして関わる。
この姿勢が、抵抗を和らげます。

安全な環境を徹底する

競争や緊張のない、落ち着いた環境を整える。
これが、生理的にも心理的にも、「戦闘モード」を解く助けになります。

催眠術師が持つべき視点

最後に、この考察全体から、催眠術師として持っておきたい視点をまとめます。
一つ。「かかりにくい」は「かからない」ではない。
支配性や警戒心が強く出ている状態は、催眠を妨げやすい。しかしそれは「今、その状態にある」というだけです。状態は変えられます。
二つ。構えを、人格ではなく状態として見る。
「この人はかからないタイプだ」と人格で判断せず、「今、警戒が高まっている状態だ」と見る。状態なら、働きかけられます。
三つ。証明されていないことを、断言しない。
テストステロンと催眠感受性の関係は、まだ確立されていません。この誠実さを、催眠術師として持ち続けること。

まとめ|ホルモンより、状態と関わりが決める

テストステロンと催眠のかかりやすさの関係を、考察してきました。
直接の研究はほとんど存在しない、というのが正直なところです。
しかし、テストステロンが高める傾向とされる性質(支配性、警戒心、コントロール欲求)と、催眠感受性に関わる性質(委ねやすさ、批判的思考の緩み、没入)を並べると、方向性が反対を向いている。
ここから「支配性や警戒心が前面に出ている状態は、催眠に入りにくい方向に働く」という仮説が立ちます。
でも、最も大切なのは、この続きです。
その状態は、環境と関わりによって変えられる。
かかりにくさをホルモンや性格のせいにして終わらせるのは、催眠術師の仕事ではありません。
その人が安心して委ねられる状態を、いかに作るか。
そこにこそ、催眠術師の技術が問われます。
ホルモンの値が、かかりやすさを決めるのではない。
その場に、どれだけ安全と信頼を作れるか。
それが、かかりやすさを決めるのです。
 
 

追記|テストステロンが高いとされる職業と、催眠のかかりやすさ

この考察を進めると、当然こういう疑問が出てきます。
「では、テストステロンが高いとされる人たち、たとえば創業経営者やトップアスリートは、催眠にかかりにくいのか」
面白い問いなので、掘り下げてみます。
ただし、ここでも前提を守ります。「職業とテストステロンと催眠感受性」を三つまとめて調べた研究は、存在しません。あくまで考察です。

テストステロンが高いとされる職業のイメージ

一般に、テストステロンとの関連が語られやすい職業には、こんなものがあります。
創業経営者・起業家。トップアスリート。トレーダーや投資家。営業のトップ層。競争の激しい分野のリーダー。
これらに共通するのは、強い競争環境にいることです。
そして先に述べたように、テストステロンは競争的な場面で上がります。
つまり、こうした職業の人は「常に戦闘モードに近い状態」に置かれやすい、と言えます。

単純に「かかりにくい」とは言えない理由

ここで結論を急ぐと、間違えます。
「戦闘モードだから、かかりにくいはずだ」と。
しかし、催眠術師の現場感覚では、話はそう単純ではありません。
むしろ、こうした人たちには催眠に深く入りやすい素質も同時に備わっていることが多いのです。
理由を三つ挙げます。

理由1|彼らは「没入」の達人である

創業経営者やトップアスリートに共通するのは、一つのことに深く没入する能力です。
事業に寝食を忘れて打ち込む。競技に完全に集中する。
この「没入する力」は、先に述べた通り、催眠感受性と最も強く関連する性質です。
つまり彼らは、警戒心が強い一方で、没入力も飛び抜けて高い。
かかりにくい要素と、かかりやすい要素を、両方持っている。

理由2|彼らは「フロー」を知っている

トップで結果を出す人は、いわゆる「ゾーン」や「フロー」を体験的に知っています。
我を忘れて完全に集中し、時間の感覚が消える、あの状態です。
このフロー状態は、催眠的なトランス状態と、脳の働きが非常に近い。
フローに入れる人は、催眠にも入れる素地を持っていると考えられます。
彼らは「自分を手放して何かに没入する」という体験を、すでに知っているのです。

理由3|「委ねる価値」を判断できる

支配性が強い人は、やみくもに委ねません。
しかし逆に言えば、「委ねる価値がある」と判断すれば、深く委ねられる。
トップに立つ人ほど、優れたコーチや専門家には、あっさりと主導権を預けます。
「この人は信頼に値する」と見極めたときの、委ねる潔さ。
これは、催眠が深まる条件そのものです。

結論|「かかりにくい」のではなく「条件が厳しい」

これらを踏まえると、テストステロンが高いとされる職業の人について、こう言えます。
彼らは「かかりにくい」のではなく、「かかるための条件が厳しい」。
警戒心が強いので、いい加減な誘導には乗りません。信頼できないと判断した相手には、委ねません。
しかし、その厳しい条件をクリアしたとき。
つまり「この術者は信頼できる」「この場は安全だ」と彼らが判断したとき。
持ち前の没入力が働いて、むしろ一般の人より深く入ることがあります。
これは催眠術師にとって、示唆に富んでいます。
競争環境にいる人、支配性の強い人を前にしたとき。
「この人はかからない」と諦めるのではなく、「この人の厳しい審査を、どう通過するか」と考える。
審査を通過できれば、彼らは深い体験に到達しうる。
かかりにくさの裏に、深いかかりやすさが隠れている。
これが、テストステロンが高いとされる人たちの、興味深いところです。