自己催眠術を最大限に使う方法
自己催眠から想定できる未来
自己催眠術という言葉につきまとう誤解
自分に暗示をかけて無理やり変わる技術。
気合やポジティブ思考を刷り込む方法。
あるいは特別な才能を持つ人だけが使えるもの。
しかし、催眠術の現場に長く立っていると、自己催眠術の本質はまったく違うところにあることが分かってきます。
自己催眠術とは、何かを「足す」技術ではありません。
むしろ、すでに自分の中で自動的に起きている無意識の使い方を、意図的に整える技術です。
人は一日に何万回も判断し、選択し、反応しています。
そのほとんどは意識的な思考ではなく、無意識によって処理されています。
何に目が行くか。
どこで緊張するか。
どんな言葉を選ぶか。
やるか、やらないか。
これらはすべて、無意識が決めています
自己催眠術とは、この無意識の判断基準に、静かに働きかける方法です。
多くの人が自己催眠を「願望実現の技術」として扱おうとします。
こうなりたい。
こうなった自分を想像する。
強く信じる。
確かに、イメージや暗示は重要です。
しかし、それだけでは長続きしません。
なぜなら、無意識は現実逃避を非常に嫌うからです。
自己催眠術を最大限に使うために、最初に理解しておくべきことがあります。
それは、無意識は変化そのものを拒否しているわけではないということです。
無意識が拒否しているのは、危険だと感じる変化です。
つまり、
「今の自分が壊れる」
「安全が失われる」
「居場所がなくなる」
と感じる変化には、強く抵抗します。
自己催眠術がうまく機能しない人の多くは、無意識にこの危険信号を出しています。
成功したい。
変わりたい。
前に進みたい。
そう思っている意識とは裏腹に、
無意識は「今のままでいれば安全だ」と判断している。
このズレがある限り、暗示は深く入りません。
自己催眠術を最大限に使うための第一歩は、
無意識を説得しようとしないことです。
変わろうとしない。
良くなろうとしない。
無理にポジティブにならない。
代わりにやるべきことは、
「今、自分の中で何が自動的に起きているか」に気づく
緊張していると気づく。
避けていると気づく。
先延ばししていると気づく。
これは自己暗示ではありません。
自己観察です。
催眠術の現場でも、深い変化が起きる直前に必ず起きるのが、この自己観察です。
無意識で起きていた反応に、意識の光が当たった瞬間、反応は弱まり始めます。
自己催眠術の核心は、
「こうなりたい自分」を作ることではなく、
「今の自分を無意識レベルで正確に把握すること」**にあります。
ここができると、初めて暗示が意味を持ちます。
暗示とは命令ではありません。
無意識にとって「採用しても安全だ」と感じられる前提を、静かに差し出す行為です。
たとえば、
「私は成功する」
という暗示が入らない人がいます。
それは、その言葉が嘘だからではありません。
無意識にとって、その言葉が危険だからです。
成功すると、何かを失うかもしれない。
期待されるかもしれない。
責任が増えるかもしれない。
無意識は、こうした未来を瞬時に計算します
だから拒否します。
自己催眠術を最大限に使う人は、暗示の言葉を慎重に選びます。
大きな理想を直接入れません。
代わりに、
「少し楽にやれている自分」
「今より自然に動けている状態」
「無理なく続いている感覚」
こうした、無意識が拒否しにくい前提を使います。
自己催眠術が上手く機能しているとき、変化はとても静かです。
劇的なやる気は出ません。
強い高揚感もありません。
ただ、
気づいたらやっている。
気づいたら避けなくなっている。
気づいたら選択が変わっている。
この「気づいたら」が増えていきます。
自己催眠術を最大限に使うために重要なのは、反復
しかし、反復とは繰り返し唱えることではありません。
同じ状態を何度も体験することです。
落ち着いた呼吸。
力が抜けた身体。
評価されていなくても大丈夫な感覚。
この状態を、短時間でもいいので何度も体験する。
すると、無意識はそれを「通常状態」として登録します。
ここまで来ると、自己催眠術は努力ではなくなります。
生活の一部になります。
では、自己催眠術を最大限に使った先に、どんな未来が想定できるのでしょうか。
まず起きるのは、
感情の振れ幅が小さくなることです。
嬉しさが消えるわけではありません。
悲しみがなくなるわけでもありません。
ただ、感情に引きずられて判断することが減ります。
反応が減り、選択が増えます。
次に起きるのは、
人間関係の変化です。
自己催眠術が進むと、
「嫌われないようにする行動」が自然と減ります。
無意識が安全だと感じているため、
無理に合わせる必要がなくなるからです。
その結果、
離れる人も出ます。
近づく人も変わります。
これは失敗ではありません。
無意識の前提が変わった結果です。
仕事やお金の面でも、変化は静かに起きます。
大胆な決断をするというより、
小さな選択が変わります。
断る。
選ぶ。
待たない。
先に動く。
こうした小さな差が積み重なり、
数年単位で見ると、大きな違いになります。
自己催眠術を最大限に使った未来は、
万能感に満ちた世界ではありません。
問題は残ります。
不安もゼロにはなりません。
しかし、
問題に巻き込まれにくくなります。
不安に支配されにくくなります。
これは、
「強くなった」
のではなく、
無意識の使い方が洗練されたという状態
自己催眠術の最終的な到達点は、
自分をコントロールすることではありません。
自分を信頼できる状態になることです。
無意識が、
「この人は大丈夫だ」
と判断している状態。
そこまで来ると、人生は驚くほどシンプルになります。
頑張らなくても続く。
考えすぎなくても動ける。
失敗しても立て直せる。
これが、自己催眠術を最大限に使った未来です。
派手ではありません。
しかし、非常に現実的で、再現性があります。
自己催眠術とは、
自分を変えるための技術ではなく、
自分が本来持っている機能を、正しく使い直すための技術だと、私は考えています。