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俳優さんが学ぶべきイメージトレーニングという名の自己催眠

俳優という仕事は、外から見える以上に内面的な作業の比重が大きい職業です。

セリフを覚え、立ち位置を理解し、演出の意図を汲み取る。

それらはすべて表層の作業に過ぎません。
実際の演技の質を左右するのは、カメラが回る直前、舞台に足を踏み出す直前、あるいは相手役と目が合ったその瞬間に、内側で何が起きているかです。
その一瞬の状態が、演技全体を決定づけます。
多くの俳優はこの事実を感覚的に理解しています。
だからこそ、イメージトレーニングという言葉が、俳優の世界では当たり前のように使われています。

役の人生を想像する。
背景を思い描く。
感情を膨らませる。
こうした行為は、演技指導の場でも頻繁に勧められます。
しかし、その実態がどのような心理状態なのか。
なぜそれが効くのか。
どこまでやると危険なのか。
そこまで踏み込んで説明されることは、ほとんどありません。
結果として、俳優は感覚と根性に頼ったイメージトレーニングを行うことになります。
うまくいく日もあれば、まったく入れない日もある。
深く入りすぎて疲弊することもある。
この不安定さは、才能の問題ではありません。
技術の扱い方が整理されていないだけです。
本稿では、俳優が日常的に行っているイメージトレーニングを、自己催眠という視点から構造的に捉え直します。
自己催眠と聞くと拒否反応を示す方もいるかもしれません。
しかし、ここで扱うのは神秘的な話ではありません。
現場で再現可能で、長く使える、現実的な技術の話です。
 

まず、自己催眠とは何かを整理する必要があります。

自己催眠という言葉が誤解されやすい理由は、催眠という単語に多くのイメージが乗っているからです。
操られる。
意識を失う。
無防備になる。
こうした印象は、エンターテインメントとしての催眠演出から生まれたものです。
しかし、心理学的に見た自己催眠はまったく異なります。
自己催眠とは、注意と想像が特定の方向に強く集中している状態です。
意識がなくなるのではありません。
むしろ、不要な情報が削ぎ落とされ、必要な情報だけが際立っている状態です。
この状態は、日常生活でも頻繁に起きています。
本を読んでいて周囲の音が聞こえなくなる。
運転中に考え事をして、いつの間にか目的地に着いている。
スポーツ選手がゾーンに入る。
これらはすべて、軽度の自己催眠状態です。
俳優が役に入る瞬間も、同じ構造を持っています。
現実の自分よりも、役の状況を優先して知覚している。
その結果、身体反応や感情が自然に変化する。
これは偶然ではありません。

人間の脳は、現実と鮮明なイメージを厳密に区別しません。

だからこそ、想像しただけで心拍数が上がったり、涙が出たりします。
この仕組みを意図的に使うのが、自己催眠的イメージトレーニングです。
俳優はこの能力をすでに持っています。
むしろ、一般の人よりも高いレベルで使っています。
問題は、それを無意識に使っている点です。
無意識に使う技術は、再現性が低くなります。
今日は入れたが、今日は入れない。
相手役や演出によって左右される。
体調や気分に引きずられる。
こうした揺らぎは、俳優本人を消耗させます。
自己催眠として理解すると、この揺らぎを減らすことができます。
重要なのは、感情を直接コントロールしようとしないことです。
多くの俳優が陥りがちなのは、感情を作ろうとすることです。
悲しい場面だから悲しもうとする。
怒りの芝居だから怒りを出そうとする。
しかし、感情は命令して出るものではありません。
感情は状況への反応として生じるものです。
自己催眠的なイメージトレーニングでは、感情ではなく状況を扱います。
今、どこにいるのか。
何が見えているのか。
相手との距離はどれくらいか。
空気は冷たいのか、湿っているのか。
身体はどのような姿勢を取っているのか。
こうした情報を具体的に、淡々とイメージします。
ポイントは、評価を入れないことです。
悲しい、辛い、怖い、といったラベルを貼らない。
ただ、事実として描写する。
その結果、感情が自然に立ち上がります。
これは非常に重要な違いです。
感情を作る演技は、どうしても力みが生まれます。
一方、状況から生じた感情は、身体反応として現れます。
観る側は、その違いを敏感に感じ取ります。

自己催眠を理解することで、俳優はこの自然な流れを意図的に作れるようになります。

次に、再現性の話をします。
良い演技ができた日の状態を、どれだけ説明できるでしょうか。
多くの場合、なんとなく集中できた。
気持ちが乗っていた。
流れが良かった。
こうした曖昧な言葉で片付けられます。
しかし、自己催眠の視点で見ると、そこには共通点があります。
呼吸のリズム。
視線の置き方。
身体の緊張度。
内的な独り言の量。
これらは毎回同じであることが多いのです。

自己催眠的トレーニングでは、これらを意識化します。

良い状態のとき、自分は何を見ていたか。
何を考えていなかったか。
身体のどこが楽だったか。
これを記憶し、再現する。
すると、演技の立ち上がりが安定します。
もう一つ重要なのは、切り替えの技術です。
俳優の世界では、役に入り込むことが美徳とされがちです。
しかし、入りっぱなしは危険です。
感情を日常に持ち帰る。
役の価値観に引きずられる。
これが続くと、心身のバランスを崩します。
自己催眠を理解している俳優は、終わらせ方も知っています。
役のイメージを一つずつ外す。
身体感覚を現実に戻す。
呼吸を変える。
これらは単純な作業ですが、非常に効果があります。
入る技術と同じくらい、抜ける技術は重要です。
長く俳優を続けるためには不可欠です。

自己催眠的イメージトレーニングは、オーディションにも有効です。

短時間で集中状態に入る必要がある場面では、感情論は役に立ちません。
状況を瞬時に立ち上げる技術が求められます。
自己催眠は、そのための近道になります。
最後に強調したいのは、自己催眠は特別な能力ではないということです。
才能のある人だけが使えるものではありません。
構造を理解し、丁寧に扱えば、誰でも使える技術です。
俳優はすでにその入り口に立っています。
イメージトレーニングという曖昧な言葉の裏にある仕組みを理解するだけで、演技は大きく変わります。
 
 
 

俳優が行うイメージトレーニングは、自己催眠と非常に近い心理状態を利用しています。

それを無意識に行うか、意識的に扱うかで、演技の安定性と深さは大きく変わります。
感情を作らない。
状況を描写する。
状態を再現する。
そして、終わらせる。
これらを理解することは、俳優の技術を地に足のついたものにします。
派手な即効性はありません。
しかし、確実に演技の土台を強くします。
それが、イメージトレーニングという名の自己催眠を学ぶ、本当の価値です。