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派手な催眠をやめた瞬間に起きた変化。

ウケる催眠術と確実な催眠術

催眠術師の根底に流れる思い

催眠術を始めた頃、多くの人が目指すのは分かりやすさです。腕が上がる。体が固まる。倒れる。忘れる。周囲から見て「おお」と声が上がる反応。自分自身も、催眠術師として何かを起こしている実感が得られる。派手な催眠には、術者側にとっても、受け手側にとっても、即効性のある満足感があります。

私自身も例外ではありませんでした。反応が出ると安心する。深く入ったように見えると成功だと思う。派手な変化が起きるほど、「ちゃんとかけられている」という確信が持てる。これは決して珍しいことではなく、多くの催眠術師が一度は通る道です。
しかし、ある時から違和感が積み重なり始めました。確かにその場では盛り上がる。体験としても強い。けれど、終わった後に残るものが薄い。時間が経つと「面白かった」で終わってしまう。本人の中で何かが変わったかというと、はっきりしない。このズレが、少しずつ無視できなくなっていきました。
派手な催眠ほど、その場の評価は高くなります。見た目が分かりやすい。第三者にも説明しやすい。動画映えもする。一方で、受け手本人は「何が起きたのか」を自分の言葉で説明できないことが多い。説明できない体験は、日常に持ち帰りにくい。その結果、変化は定着しません。
ここで気づいたのは、派手な催眠ほど「外側の体験」になりやすいということでした。驚きや反応は外から与えられる。起きたことを評価する軸も外にある。すると本人の無意識は、「何かをされた」という位置に留まりやすくなります。
思い切って、派手な演出を一つずつやめていきました。深さを強調する言葉を減らす。反応を決めつけない。分かりやすい現象を狙わない。すると最初は、不安になります。本当にこれでいいのか。何も起きていないように見える。失敗しているのではないか。術者側の自信が試されます。
ところが、派手な催眠をやめた瞬間から、別の変化が起き始めました。まず、受け手の表情が変わりました。驚きや緊張ではなく、落ち着いた集中が長く続くようになった。終わった後の言葉も変わりました。「よく分からなかった」ではなく、「説明しにくいけど楽になった」「何かが静かになった」という表現が増えました。
さらに時間が経つと、後日報告の内容が変わります。悩んでいたことを考えすぎなくなった。選択に迷わなくなった。感情の戻りが早くなった。これらは派手ではありませんが、生活に直結しています。本人も「催眠が効いた」というより、「いつの間にか変わっていた」という感覚を持ちます。
ここで初めて、催眠の役割がはっきりしました。催眠は、何かを起こす技術ではなく、邪魔をしない技術だということです。無意識は、余計な演出がない方が自然に動きます。派手な催眠は、術者の存在感を強めます。静かな催眠は、受け手自身の感覚を前に出します。
派手な催眠をやめると、セッション中の空気も変わります。急がなくなる。結果を追わなくなる。沈黙が怖くなくなる。すると不思議なことに、深さを測ろうとしなくても、必要なところまで自然に進みます。深いか浅いかを決めているのは、術者ではなく、受け手の無意識だという前提が、ようやく腑に落ちました。
もう一つ大きな変化は、失敗という感覚が消えたことです。派手な催眠をしていた頃は、反応が出ないと「今日は浅かった」「この人はかかりにくい」という評価が生まれがちでした。派手さをやめると、その評価自体が意味を持たなくなります。反応が静かでも、何も問題がない。変化は後から出ればいい。この姿勢に変わったことで、セッション全体が安定しました。
受け手側の安心感も明らかに増しました。何かを期待されていない。うまく反応しなくてもいい。頑張らなくていい。この空気は、言葉で説明するよりも強く伝わります。結果として、委ねる深さはむしろ増します。
派手な催眠をやめたことで、催眠術師としての役割も変わりました。主役は自分ではない。変化を起こす人でもない。環境を整える人であり、邪魔をしない人である。この立ち位置に変わった瞬間、無理に技を使わなくても、必要な変化は起きるようになりました。
もちろん、派手な催眠を否定しているわけではありません。ショーとしての価値もありますし、体験の入口として有効な場面もあります。ただ、人生や日常に影響を残したいのであれば、派手さは必須ではありません。むしろ、派手さが邪魔になることすらあります。
派手な催眠をやめた瞬間に起きた最大の変化は、催眠を「証明しなくてよくなった」ことです。誰かに見せるためでも、納得させるためでもなく、本人の内側で静かに起きていればそれでいい。この基準に変わったことで、催眠は技術から対話へと変わりました。
結果として残ったのは、かかった感覚ではなく、戻った後の違いです。何も起きていないように見える。でも確かに違う。この静かな変化こそが、派手な催眠をやめたことで手に入った、いちばん大きな成果でした。