催眠術はなぜ「かかっていない」と本人が思うのか
催眠は「特別な感覚」だと思い込んでいるからです。
多くの人は、
意識がなくなる。
体が勝手に動く。
記憶が飛ぶ。
こうした状態を「催眠がかかった状態」だと想像しています。
しかし実際の催眠状態は、
意識ははっきりしています。
会話もできます。
自分で考えている感覚もあります。
このため本人は、
「普通に起きている」
「自分で判断している」
と感じます。
それが「かかっていない」という認識につながります。
もう一つ大きな理由があります。
催眠は無意識が主役だからです。
人は行動や反応の多くを無意識で行っています。
呼吸。
姿勢。
感情の揺れ。
イメージの広がり。
これらは起きているときも常に起きています。
催眠では、この無意識の働きが少し強調されるだけです。
ところが本人の意識は、
「自分でやっている」
という感覚を保ち続けます。
そのため、
変化が起きていても
「特別なことは何も起きていない」
と判断してしまいます。
さらに重要なのが、
比較対象が存在しないことです。
初めての催眠体験では、
「これが正解なのか」
「もっと何か起きるはずでは」
と頭で評価し始めます。
評価が始まると、
体験そのものより
判断の方に意識が向きます。
結果として、
「よく分からなかった」
「かかっていない気がする」
という感想になります。
実際には、
後から眠りが深くなった。
気分が軽くなった。
考え方が変わった。
こうした変化が出ることも多いです。
これはその場で気づかなかっただけで、
催眠の影響が静かに続いている状態です。
まとめると、
催眠術が「かかっていない」と思われる理由は、
催眠が
派手ではなく
自然で
日常の延長線上にある体験だからです。
何も起きていないように感じる。
それこそが、
最も催眠らしい感覚だとも言えます。
その場では変化を感じないのに後から効く理由
催眠の変化は、
意識ではなく無意識側で起きている
これが最大の理由です。
その場で体感できる変化は、
安心感。
リラックス。
ぼんやり感。
この程度のことがほとんどです。
ところが無意識は、
その場で結論を出さず、
時間をかけて調整を始めます。
これは人間の脳の通常の働きです。
大事な判断ほど、
一度持ち帰り、
寝かせてから処理します。
催眠中に入った暗示や気づきも同じです。
その場では
「ふーん」
「なるほど」
程度で終わります。
しかし日常に戻ったあと、
同じ状況。
同じ悩み。
同じ選択肢。
に直面したとき、
反応が微妙に変わります。
考え込まなくなった。
以前ほど気にならない。
自然に別の行動を選んだ。
本人は
「理由は分からないけど」
と感じます。
ここで初めて、
後から効いていたことに気づく場合もあります。
もう一つ重要なのが、
期待が邪魔をしていた
という点です。
人は
変化を期待すると、
今の自分を細かく観察し始めます。
すると変化は起きにくくなります。
期待が外れた瞬間、
監視が外れます。
そのタイミングで、
無意識は自由に働き始めます。
結果として、
「終わってからの方が楽になった」
「数日後に効いてきた」
という現象が起きます。
つまり、
後から効く催眠とは、
遅れて効いたのではありません。
静かに進行していた変化に、
あとから意識が追いついただけ
なのです。