SNSや動画で起きるスクロール催眠とトレンド催眠
~“自分で選んでいるつもり”を静かに上書きする力~
スマホを触っていると、止めるつもりのないまま指が勝手に動く。
興味のない動画を見ているのに、流れのまま次へ進む。
気づけば30分、1時間、もっと長くスクロールしてしまう。
トレンドの話題をいつの間にか知っていて、
「別に興味はなかったけど、何となく追ってしまった」
と感じることがある。
これらはすべて
“スクロール催眠” と “トレンド催眠”
と呼べる現象である。
SNSはただの情報の場ではなく、
注意・感情・判断を無意識レベルで動かす“環境催眠装置”になっている。
この記事では
と動画プラットフォームで起きている催眠を
分解・構造化して解説する。
スクロール催眠とは何か
無意識が“動作の連続性”を欲しがる現象
スクロール催眠とは、
スクロールという単純な動作が無意識に習慣化し、
止めにくくなる状態のことを指す。
ポイントは三つ。
1.動作が脳の“自動運動”になる
人間の脳は、繰り返される動作を
「考えずに続ける行動」
として自動化する仕組みを持つ。
スクロールはその最たる例。
・単純
・負担が少ない
・動作と報酬の間隔が短い
これらが揃うと、脳は
続けた方が楽”
という判断をする。
催眠術の「単調なリズム誘導」に酷似している。
2.予測不可能だから止めにくい
SNSのタイムラインは
次に何が出てくるか分からない。
この 「予測できない報酬」 は
脳にとって最も強い依存性を生む。
これは「変動報酬スケジュール」と呼ばれ
ギャンブル・ゲームなどと同じ構造。
予測できないから期待が生まれ
期待があるから止まらない。
3.動画や画像が“感覚を奪う”
スクロール中は
・視覚刺激
・音声刺激
が途切れず流れ込み、
意識の負担が減る。
負担が減った状態は
催眠状態と非常に近い。
結果として
スクロール → 無意識 → スクロール
というループが生まれる。
スクロール催眠が起きたときの脳の状態
刺激と小さな報酬が連続している
スクロール催眠が起きているとき、脳では以下が同時に進行する。
・ドーパミンの微量放出
・視覚中心の情報処理
・意識の弱まり
・判断の先送り
・感覚の緩み
催眠術師が作る“深いリラックスの入口”と類似しており、
非常に入りやすい状態が形成される。
トレンド催眠とは何か
“みんなが見ている”が判断を上書きする現象
トレンド催眠とは
人気・再生数・話題性が、そのまま判断基準になってしまう現象
のことである。
ポイントは三つ。
1.多数派への同調
人は
「多くの人が関心を持っている」
という情報に非常に弱い。
再生数
いいね数
リツイート数
コメント数
これらはすべて
多数派の証拠”
として無意識に作用する。
催眠術でいう「外部権威付け」と同じ。
2.情報の洪水で“判断コスト”が下がる
SNSでは情報量が多すぎるため、
脳は選択に疲れやすい。
疲れると
最も簡単な判断法を使う。
「みんなが見ているものを選ぶ」
という方法である。
これがトレンド催眠の核心。
3.トレンドは“未来イメージ”を持つ
トレンドになっているものは
話題性 → 得
参加しない → 乗り遅れ
という未来イメージを生む。
未来イメージは、催眠の“行動トリガー”。
結果として
興味がなくても追ってしまう。
SNSが催眠を起こしやすい理由
無意識が開く仕組みを持っている
SNSや動画アプリ全体が
催眠に入りやすくなる構造でできている。
以下はその代表例。
1.縦長の画面が“視野を限定”する
視界が限定されると
注意が一点に集中しやすい。
これは催眠誘導の基本。
スマホはこれを自然に作る。
2.“無限スクロール”という無終点構造
終わりが見えないものは
終わりを探す必要がない。
脳が判断をやめる。
判断が弱い状態は
催眠の入り口。
3.1~5秒で切り替わる刺激
刺激の頻度が高いほど
意識の働きが疲れて弱くなる。
こうなると
感じる方が楽”
になり、無意識が主導権を握る。
4.短い言葉と強い色彩
サムネイル
文字入れ
字幕
背景
エフェクト
すべてが“感情の即時反応”を目的に作られている。
理解より先に感覚が動く。
催眠と同じ。
スクロール催眠とトレンド催眠の“危険性”
悪い意味ではなく、“無自覚な誘導”が起きるという意味
危険性とは、
ネガティブという意味ではなく、
自分で選んでいないのに選んだ気になってしまう”
という状態。
以下に分解する。
1.判断が外部化する
トレンドに任せることで
判断が“外部委託”される。
・再生数
・人気
・ランキング
・おすすめ
これらが自動で選択肢を決める。
2.感情が引っ張られる
SNS上で多く見かけるものは
自分の感情の中心”になりやすい。
例えば
見たくもない喧嘩動画
ネガティブ投稿
誹謗中傷
これらが感情を奪っていく。
3.時間の感覚が消える
刺激が続くと
今自分が何分見ているか”が消える。
催眠でも深い状態になると同じ現象が起きる。
ではどうすればいいか?催眠術的な防御
無意識を守る簡単な方法
催眠の専門家として言えるのは
完全に避ける必要はない”ということ。
必要なのは、影響を最小限にすること。
以下は効果が強い。
1.一度“意識化”する
スクロール中に
「今スクロールしてるな」と思うだけで
自動化が弱まる。
2.トレンドの理由を見る
人気より
なぜ人気なのか”
を一瞬考えると、トレンド催眠は止まる。
3.見る時間に上限を決める
制限ではなく
枠”を決める。
枠があると催眠が深くならない。
4.暗い部屋で見ない
光の刺激が強いと
無意識が過敏になる。
明るい場所で見るだけで
スクロール催眠が弱くなる。
まとめ
・スクロール催眠は“動作の自動化”で起きる
・トレンド催眠は“多数派の証拠”で判断が上書きされる
・SNSは構造上、催眠状態に入りやすい
・刺激・情報過多・短い報酬周期が無意識を動かす
・意識化と環境調整で影響を最小限にできる