「催眠術ほんと?」にプロが全力で答えます
催眠術は本当に存在するのか?
テレビで見るのはやらせじゃないのか?
言いなりになるなんて、信じられない。
そう思うのは当然だと思います。
現代に生きる私たちは、“目に見えないもの”を信じることに慎重です。
疑ってかかるのは、むしろ健全な態度です。
だからこそ、私はこの問いに対して、感情でも主観でもなく、「事実」と「理論」で答えたいと思います。
これは、催眠術の信者を増やすための話ではありません。
あなたが“自分の感覚”を取り戻すための話です。
催眠術とは何か──幻想を排して説明する
催眠術は、特別な力でも、魔法でも、洗脳でもありません。
一言で言えば、「注意と感覚を特定の方向へ向ける技術」です。
具体的には、相手の集中を一点に向け、意識のバランスを変化させることで、暗示が通りやすくなる状態をつくります。
この状態を「トランス」と呼びます。
意識はあるが、意識が変わる。
矛盾のように思えますが、これは誰でも日常的に経験しているものです。
誰もが体験している日常催眠
たとえば、映画を観ていて涙を流すとき。
登場人物はフィクション、音楽も効果音、でもあなたの感情は本物です。
これは「意識の切り替え」が起こっている証拠です。
あるいは、運転中にふと気づいたら目的地についていたとき。
何を考えていたか思い出せない。
これも浅いトランス状態です。
つまり、「催眠状態」というのは特別な意識ではなく、日常的な意識の一部です。
それを意図的に誘導し、活用する技術が催眠術です。
科学的に見た催眠の正体
催眠術は、心理学・神経科学・生理学の分野でも研究されています。
近年ではfMRIや脳波計測により、催眠状態にある脳の活動パターンが、通常時とは異なることが確認されています。
特に注目されているのは、「前帯状皮質」や「デフォルトモードネットワーク」の活動変化です。
これは、内面への集中や外界との遮断が起こっているときに特徴的な脳の状態です。
また、催眠中は「被暗示性」が上がることが確認されており、これは単なる演技では説明がつきません。
イェール大学やスタンフォード大学では、臨床催眠が医療現場で使われています。
痛みの緩和、不安の低下、恐怖症や依存症への応用が実際に行われており、研究論文も多数存在します。
「言いなりになる」は本当か?
催眠術は、人を操るものではありません。
実際には、「その人が受け入れられる範囲」でしか反応は起こりません。
強く拒否する内容や、倫理観に反する行為は、たとえ深いトランス状態でも行動に現れることはほとんどありません。
「催眠で犯罪をさせた」という噂や都市伝説はありますが、裁判ではほとんどが否定されています。
催眠は“支配”ではなく、“協力”によって成立するものです。
なぜテレビでは大げさに見えるのか?
テレビ番組で見る催眠ショーは、演出上“わかりやすい反応”が選ばれています。
誰でも催眠にかかるわけではなく、特に感受性の高い人がステージに上がります。
さらに、演出効果としてリアクションが誇張されることもあり、「全部やらせ」と感じる人も多いでしょう。
しかし、催眠の本質は、外から見えにくい内面の変化にあります。
見た目が派手かどうかは本質ではありません。
催眠術が意味を持つ理由
催眠術の本当の価値は、自己認識の変化にあります。
自分が感じること、考えること、動くこと。
それが、たったひとつの言葉やイメージで変わる。
それは、「人間の意識は思っている以上に柔軟で、可能性に満ちている」ということの証明です。
そしてこの技術は、正しく使えば「苦しみを和らげる」「能力を引き出す」「行動を変える」ことにもつながります。
催眠術は“信じるもの”ではなく、“知るもの”
信じる信じないではなく、
現代の催眠術は、過去のオカルト的なイメージから距離を置き、
「催眠術って本当にあるの?」
そう聞かれたら、私はこう答えます。
「ある。ただし、信じた人ではなく、体験した人にだけ」